教員著書あ・ら・か・る・と  著者からのコメント


異文化にみる非言語コミュニケーション:Vサインは屈辱のサイン?

御手洗昭治著(ゆまに書房2000.4)

 オックスフォード大学の人類学者であるD.モリスは、「これまで言語至上の影に隠れて研究が軽視されているのが異文化間の非言語コミュニケーションである」と述べ学会関係者を驚かせたことがある。 座り方、目線、相手との距離の取り方、相手国との国境意識など普段は意識しない、また言葉に出さないメッセージを「非言語コミュニケーション」というが、同氏が強調したかった事は、この分野の研究が未だに未開発という点である。
  したがって、 本書では、従来の欧米型方法論を見直し、新たに新領域を加えた方法で「ノンバーバル・コミュニケーションにはどんな種類があるかを詳細に説明。また、多くの関連書が欧米文化における非言語コミュニケーションを取り扱う中で、アジア・アフリカの文化まで視野を広げて、分析紹介しているのが特徴。(読売新聞夕刊道内4/26/'20の書評)」。加えて、あの「ペリー提督」に学ぶ「コミュニケーション」の方法も紹介。なお本書は、道新、TOEIC協会の季刊紙「FRIENDS」、「英語教育」8月号、SIETAR JAPAN JOURNAL誌でも推薦書として紹介される。


個人と組織の経営学

篠崎恒夫著(同文館2000.4)

 経営は人々の協働で成り立っているが、組織が巨大化すると、否が応でもそこには、官僚制として捉えられる組織の枠組みと分業に基づく熟練の収奪が見られる。しかしながら、従来、経営学では組織論と分業・熟練は全く別のテーマと考えられてきた。一方は、組織構成員の持てるカを個人動機と組織目的との対立の狭間にあっていかに発揮させるかの問題であり、他方は、集団でみんなが同じ仕事を行うよりは、仕事を分割して各人がそれぞれ違った部分を受けもつ方が能率が上がるが、そこでは人間が本来的に持っていた熟練が機構に埋没してしまうという問題である。
 労働過程論や組織論の近年の研究を背景として、本書は、バーナード組織論と官僚制を取り上げることにより、人間の組織行動における非論理的課程の重要性を説き、暗黙知の存在を明らかにする。一方では、トヨタやボルボなどの自動車産業職場での分業と労働者熟練を論じて、機構の中で熟練が収奪されるだけではない労働のあり方から、仕事の中でも暗黙知が重要であることを示す。本書は、従来別々と考えられてきた問題範疇を融合する試みの中で、人間行動の原理の見直しを提唱する。