この本読んだ 15


『「捨てる!」技術』 辰巳 渚著(宝島社2000.4)

 モノは単なる物体ではなくて、所有したときから自分の一部になるのではないか。だから、この消費社会の論理−欲しいものを持つことで自己実現できるという感覚が成り立つ。逆にいったん手に入れたモノを失うと、実現された自己の一部を失うような痛みを覚える。新しいものを手に入れるのは、とてもうれしい。それがすごく欲しかったものならば、なおさらである。しかし、欲しいものは次から次へと現れてくる。そうすると、また、手に入れようと努力し、手に入れる。ところが、手に入れたものと捨てたものの量は、いつも同じに保たれているわけではない。この繰り返しから、私の部屋はものでいっぱいになってしまった。誰でも多かれ少なかれ、心あたりがあるだろう。この本には、「捨てる」為のテクニック10か条をはじめ、残しておくことが、必ずしも美徳ではないことを、例をあげて説明している。この本によると、日常生活で処理に困っているものベスト3は、洋服、本、雑誌であり、捨てるに捨てられないものベスト3は、洋服、本・雑誌、写真(ネガを含む)であるとのアンケート結果を載せている。私がなかなか捨てられないものの、ベスト3もまさに同じであった。なぜ、捨てないのか。捨てられないのか。捨てるのを忘れているだけなのか。確かに単に捨てるという行為にも、かなりのパワーを必要とする場合がある。来るべき、21世紀に向け日本人の風習である、年末の大掃除に、この本が「20世紀の古きもの」を私に捨てさせてくれるだろうか。 (2F開架 597-Ta95) (三浦真一)