UCSD の図書館事情

       外国語学部英語学科教授 濱田 英人


 私の研修先のカリフォルニア大学サンディエゴ校 (UCSD)の図書館は確かに整備されており、利用しやすいという印象を受けます。 大学構内には医学系、理科系、文科系と専門分野に応じてといくつか図書館がありますが、Geisel Libraryという地下2階、地上8階建ての中央図書館が大学の中心にあり規模も大きく、宇宙ステーションのような斬新なデザインと共に大学のシンボルになっています(写真参照)。大学の敷地が広いこともあるのでしょうが、けっこう大きな建物で、1階はちょっとした歴史文化資料館の機能も果たしています。また、受け付けカウンターとは独立してインフォメーションデスクがあり、館内の利用法や情報収集の方法などの相談に応じてくれます。

 この図書館の開館時間は、授業期間中の平日および日曜日は朝の8時から深夜までで、土曜日だけが午前10時から午後6時までとなっているのはアメリカの他の大学図書館とさほど違いはないと思います。しかし、一つ不便を感じたのは休暇期間中は開館時間が短くなることで、午後の5時に閉ってしまいます。閉館30分前になると『閉館30分前です。本の貸し出しを希望する方は至急手続きをすませてください。閉館10分前に館内の電気が消えエレベーターも停止されます。』という放送が入ります。ですから、この放送が聞こえてくると、何が何でも館外へ出なければなりません。

 蔵書もかなり揃っており、4階にアジア関係の書籍があり日本語と中国語の本が主として並んでいますが、そこはまるで日本の図書館にいるような錯覚におちいるほどです。私の専門でいえば、言語学関係の和書も日本の大学図書館とあまり変わらないのではないかという気がします。少なくとも私が参照したいと思った和書は大体揃っており、必要になると思い持って来た和書もほとんどありますので、苦労して持って来た甲斐がなかったほどです。また、図書の分類も細かく例えば7階について言えば、言語学も研究分野別に整理されています。ですから、シリーズ本でも一ケ所に並んでいないため検索しなければならず、最初は不便に感じていましたが、少し慣れてくると「語用論関係」「意味論関係」「認知言語学関係」「生成理論関係」「談話理論関係」といった整理の仕方も特定分野で何か面白そうな本はないかというときには便利な気がします。また、地下に20台、1階に40台のコンピューターがある他に各階にもコンピューターが2台づつ設置されており必要な本の検索が手軽にできることに加え、コピー機2台づつ各階にあり、コピーカードも1度買ってしまえば、あとは1階に備え付けてある機械で10ドル単位でリチャージしながら使えるシステムになっています。また、各階の閲覧スペースもとても広く、コンセントも至る所にありますので、コンピューターを持ち込んでレポートを作成している学生の姿をよく目にします。

 こちらの図書館のシステムで少し驚いたのは貸し出し期間が客員研究員の場合にはその滞在期間中ということです。これはこちらの大学の教員も同じだそうです。ですから私の場合はいつ本を借りても、貸し出し期限は来年の3月31日までということになります。最初は遠慮がちになるべく早く返却するように心掛けていましたが、よく参考にする図書は今では自分の本のように共同研究室におかせていただいています。これは逆の立場からしますと、研究テーマで必要な本が貸し出し中になっている場合には取り寄せていただくことはできるのですが、すぐに参照できない点では不便に思うこともしばしばあり一長一短があるようにも思いますが、UCSD の図書館が特に海外から研修で来ている人達の研究を支えてくれているのは確かです。