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学長からのごあいさつ

 

札幌大学・札幌大学女子短期大学部 学長 鈴木 淳一

鈴木淳一学長

「大人」への階梯―
「自覚と志」、そして「知識と経験」

 

私たちが何よりも望んでいるのは、誤解を恐れず端的に言い切ってしまえば、皆さんが「大人」へと成熟してくれること、この一事に尽きます。

「大人」とは、自分と世界を並列的に考えられる人間のことです。人間誰しも自らの幸福と快楽を願い、その実現を欲する権利を有していますが、「大人」とは、自分が世界というジグソーパズルを構成する、かけがえのないワンピースであるとの認識を血肉化し、自らの権利行使が世界と衝突するとき、自らの権利行使を保留し、考え直すことのできる人間のことです。専門的知見も重要ですが、専門的知見から世界の災厄ではなく、自分と世界の幸福と存続を導出するには、専門的知見の持主が「大人」でなければなりません。

「大人」へと成熟し、生の充実を深々と味わうためにはまず、過去の自分を深く問い直し、現在の自分を「自覚」しなくてはなりません。そしてこうありたい、あるべきだという未来の自分をめがけた「志」を持ち、その「志」を貫徹しなければなりません。「志」の貫徹に不可欠な推進力―それが「知識」と「経験」です。文系と理系を問わない幅広い「知識」、机上の「知識」を実用へと鍛え上げる「経験」。「自覚と志」が「知識と経験」に支えられて初めて、「大人」への階梯を営々と昇り続けることができるのです。

「大人」への階梯に終点はありません。「大人」とは、時代と環境によって変容せざるを得ない概念、公式化に馴染まない概念、比喩的にしか語れない概念であり、人間もまた絶えざる変化を宿命づけられた存在だからです。一義的に定義づけられた「大人」は、もはや「大人」ではありません。日々思いを新たに「大人」とは何かを問い返しながら、「自覚と志」に導かれ、「知識と経験」を駆動させ、「大人」たろうと努力し続ける人間だけが「大人」としての資格を獲得できるのです。

「教えるとは希望を語ること、学ぶとは誠実を胸に刻むこと」―これはフランスの詩人アラゴンが書いた美しい詩、『ストラスブール大学の歌』の一節です。私たちの言動がいつでも皆さんの心に、どんなにささやかではあれ、希望の芽を育むものでありますように、また皆さんは、日々何事であれ、誠実に取り組み、新たな知識と経験を潜り抜けるたびに変貌を遂げ、大人へと成熟していってくれますように―この祈りを私たちと皆さんの契りとし、皆さんの本学での4年間がこの契りの実現であることを期待して止みません。