社会・地域連携

札幌大学公開講座

札幌大学では、地域に開かれた大学を目指し、教育研究上の成果を広く地域住民の方々に還元することを目的に公開講座を開設しています。

令和6(2024)年度札幌大学公開講座

第一回

「緊急事態」下の地方自治

藤巻 秀夫

日本においては、政府関係者のみならず国民(住民)も「地方自治」に対する感性は鋭くないと言わざるをえません。例えば江戸時代は、徳川幕府とは別に全国300余の藩があり、それぞれの地域を統括・統治していましたが、明治維新によって地方は国(中央政府)の出先機関化し、府県の知事や幹部には内務省の官吏が派遣されていました。法制度的には、急速にドイツ(プロイセン)風の地方制度(地方自治ではない)が整備されましたが官治的なそれでした。
 日本国憲法になって初めて地方自治が憲法条文化されましたが、それはGHQによってもたらされたものであり、日本政府や日本国民が求めた思想・制度ではありませんでした。1990年代には「地方分権」がブームとなりましたが、それは連立政治に参加する諸政党の安易な接着剤という側面がありました。要するにわが国では地方自治というものは地に足がついていないということです。
 それでも2000年施行の地方分権一括法による地方分権改革は、制度的には大きな成果をあげましたが、それが十分に根を下ろすことなく、新型コロナウイルス感染症のまん延を奇貨として換骨奪胎しようとしているのが、2024年の改正地方自治法であると考えます。
 この公開講座では改正法のねらいと問題点について法学的な観点から明らかにしています。地方自治に興味や関心がある方はぜひ見る▶YouTubeをクリックしてください。

第二回

「曖昧さ」をあつかうこと

山内 和幸

多くの科学において、その研究対象の合理的な構造を解明することは本質的な使命と言えるものであり、その目的の下で、解析学、確率論あるいは統計学等、精緻科学の技法は他の科学にも採用されてきました。
 一方で、どんなに緻密に現状を分析しても予想外のことは起こります。
技法が上手く機能しなかった事態においてはその原因を見つけなくてはなりませんが、人為的ミス等,誤謬の根源を探し当てるのは意外に厄介なものです。
 ここでは、日常の些細な現象に関する感覚を素材にして、観察と印象の関係を非常にゆるく検証してみたいと思います。